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『ぞうれっしゃがやってきた』と『猫は生きている』~2冊の絵本 [授業ネタ]

 『文学・絵画・映画で学ぶアジア太平洋戦争』(『歴史地路教育』2017年3月臨時増刊号)巻末の「教材と資料」の一覧表を見て、様々な思いにとらわれる。それぞれに名作だと思うが、中でも私の心に残っているのが、『ぞうれっしゃがやってきた』と『猫は生きている』の二冊の絵本だ。

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 インディラ=ガンディーの説明として正しいものを一つ選べ。
  ① 夫はセイロン(スリランカ)首相であった。
  ② 夫はバングラデシュ大統領であった。
  ③ 父はパキスタン大統領であった。
  ④ 父はインド首相であった。
               (1996年 世界史 本試第4問)

 南アジアの女性政治家の多くは,有力な政治家の妻や娘であり,例えばインディラ=ガンディーは,インドの初代首相であった写真の人物(次図参照)の娘であった。写真の人物について述べた文として正しいものを,以下の①~④のうちから一つ選べ。
  ① 毛沢東とともに平和五原則を発表した。
  ② 首相在任中,中印国境紛争が起こった。
  ③ プールナ=スワラージ(完全独立)を要求する決議に反対した。
  ④ インド国民会議の創設に参加した。
               (2003年 世界史B 本試 第4問B)



 「インディラ」といえば、戦後ネルー首相が日本に贈った象の名前だが、ネルー首相が象を贈るきっかけの一つは、戦後まもなく、象を見るために全国から名古屋の東山動物園(戦争中も2頭の象を飼育し、戦後まで飼育を続けていた)を目指してやってきた象列車であったという。私は象列車と象のインディラのことは知っていたが、この二つの出来事に関係があったことは、以下の文章を読むまで知らなかった。
http://spijcr.mithila-museum.com/topics/zou/zou.html

 事実は小説よりもドラマティック。絵本では「ぞうのおりのつうろに、軍馬のえさが、つみこまれました。しいくがかりのおじさんたちは、それをこっそりぬきとり、ぞうにあたえました。」とあるだけだが、当時の東山動物園で軍馬を飼育していた獣医の三井高孟氏(軍属で階級は大尉)は飼育員が兵糧の中から象の餌となるフスマを盗んでいたのを黙認し、さらに兵士に命じてわざと象舎の通路にそれらの穀物が入った袋を置き忘れさせた事もあったという。 http://mi84ta.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/3-96bb.html


 もう一冊、『猫は生きている』は早乙女勝元さん原作の絵本で、絵は田島征三さん。東京大空襲を題材にした絵本である。野良猫「稲妻」母子と、猫一家を見守る昌男一家(父親は出征中)の強さと優しさ、たくましさが、田島さんの迫力ある絵と相まって印象深い秀作である。私は小学生の頃学校の体育館で、この絵本を元にした人形劇映画を観たが、稲妻が子猫たちとともに飛び上がるシーンが今でも心に残っている。いま読み返すと、野良猫一家を絶対家にはあげない厳しい母親だが、それもわが子を思えばこそ。猫一家の奮闘を見て「ちゅんと鼻水をすすりあげ」、空襲でともに子どもを連れて逃げる稲妻の頭をなで、稲妻の姿を思い出しわが子を守ろうとする母。この絵本の主人公は、稲妻と昌男の母親だろう。
 私が最近好きなマンガは、深谷かほるさんの『夜廻り猫』と、武田一義さんの『ペリリュー~楽園のゲルニカ』だが、『夜廻り猫』で主人公の野良猫、遠藤平蔵が(「おまえ」ではなく)「おまいら」「おまいさん」というセリフを口にするたび、『猫は生きている』のラストを思い出し、胸が熱くなる。最後の力を振り絞って猫一家を助けようと「行け、おまいたち!」と言葉をかける昌男。猫一家の無事を確認した昌男は力尽き、安堵したように川の流れに身をまかせ水の中に消えていく。昌男のおかげで難を逃れた猫一家は、彼の母親を発見し....『ぞうれっしゃ』と異なり、非情な結末ではあるが、子ども向けのこうした絵本も貴重だと感じる。昌男の母親の顔をなめる猫一家の部分は、50歳を過ぎた私が読んでも目頭が熱くなる。
 人形劇映画DVD推薦のことばで、作者の早乙女さんは次のように述べている。
http://www.hminc.jp/lineup/neko/nekokaisetu.html
「私は「猫は生きている」を子供たちに見せるにあたって、戦争の悲惨さはもちろんのことですが、実はそれよりも先に、子を思う母の気持ちを、その愛の強さと尊さを、きちんと伝えたいのです。子を思う母の気持ちは、必ずしも人間ばかりではありません。その辺のどこかの家の床下に住む猫チャンだって同じです。人間のみならず、他の生物の愛情まで否定するのが戦争なのでしょうか。それならば、戦争勢力をうちのめす強い愛もなくてはなりません。それが、今日の本物の人間愛ともいえるのではないでしょうか。」

心に残る言葉だ。


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