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世界史の定期テスト問題 [その他]

 数年前に比べると、最近の『社会科教育』はおもしろい。昔は対象がよくわからない中途半端な記事も多かったが、最近は執筆陣のレベルも上がっており、高校教師向けの記事も増えている。11月号は、「考える力を高める難問・良問チャレンジ40選」という特集。

 以前三城俊一先生が作成された、第一次世界大戦中のイギリスによる多重外交を説明するLINEのトーク履歴画像がホントによく出来ていてに面白かったので、「これは試験問題に使えそう」とツィートしたことがある。
https://twitter.com/hirai_h/status/911495223544487936
 先日、ルイ16世のツイッターアカウントという設定で作成された世界史の定期テスト問題を目にした。中間テストでフランス革命とナポレオンだから、世界史Aであろう(うちは産業革命までだった)。https://pbs.twimg.com/media/DMd017RU8AEYBJt.jpg

 この問題、私はよく出来ていたと思うし、こんな問題を作ってみたいと思っている。細かいツッコミは出ていたが(例えば、「アカウント名はruiではなくlouisに」とか)、それもまた読んでて楽しいものであった。しかし、同業者たる教員からの反応は今ひとつであったのは実に興味深い。教師アカウントが出題者のパーソナリティを主に取り上げて批判しているのに対し、非教師アカウントは問題の形式を肯定的に取り上げている点もまた興味深い。
 ツイッター上で教員(あくまでアカウント主が「自分は教員だ」と言っているだけであり、ツィートしてる人物が本当に教員かどうかは真偽は不明である....実際、「ツイッターなのでどこまでが本当なのか見た方にお任せしてます」とツィートしてる自称教員のアカウントも実在する)が出したコメントをいくつか拾ってみる(わかりやすい表現に変更したものもある)。
 ・テストに受け狙いは不要
 ・授業プリントだったらとてもいい教材
  (テスト問題としては不適切という意味だろう)
 ・起案の時点で教務から却下されそう
  (テスト問題に起案が必要という点に驚いた)
 ・言葉遣いが不適切で、ルイ16世の人格を生徒が誤解する
 ・こういうテストを出題する教員は如何なものか
  (内容よりも教師のパーソナリティに対する批判だと思われる)
 ・学校のレベルに合わせたテストではないか
 ・TPOを間違えている
 ・このテストは次元を超えている(文脈から判断して否定的なコメント)
 ・私立の進学高校だったらクレームが入ってくる

 「生徒視点で見れば楽しいだろうけど、教員目線で見るともう少し考えられなかったのかなと思います。面白いけど!!」というコメントもあったが、私は十分考えられた試験問題だったと思う。「テスト問題としては不適切だが授業プリントならいい教材」という意見には、「え?なんで?逆ならわかるけど?」というのが私の感想。基礎→応用と段階を踏むのが普通だと思うのだが。
 言葉遣いについては「このセリフ調の文面が如何にも生々しくてTwitterらしい」という意見も見られた。おそらく「なう」「w」の表現を指しているのだろうが、私は作成者の場を読む柔軟なセンスを感じている。なお、ツイッターの特性上、過去の事件が新しい事件よりも下に表示されるという点は仕方ないと思う。順序が逆だという指摘については、「流れについては歴史のテストだから順序的にって感じがします。」という意見があり、同意。「学校のレベルに合わせたテスト」「私立の進学高校だったらクレームがくる」は、いちばん不快なコメント。「自称進学校」とか、エリート意識丸出しの言葉を使う教師。

 クオリティが高い問題を作るには、勉強しなければいけない。このルイ16世の問題を例に取ると、ツィートの時点を何年何月にするかとか、アカウント主をルイ16世にするかマリ=アントワネットにするか、はたまたロベスピエールにするか(私はロベスピエールのほうがよかったような気がするが....球技場の誓いにも参加しているので)を検討するだけでも結構勉強になるのではないだろうか。テストが終わって返却するとき、「ホントは画家ダヴィドのアカウント作りたかったんだけど...」とかの話しが出来れば、なおよいように思う。

 今月の『社会科教育』に掲載されている文章の中で、草原和博先生は評価活動を三つに分類しているが、このルイ16世ツイッター問題は、「履修評価」を行う問題に該当すると思われる。少なくとも「悪問」とは思えないが、「立場が変われば良問も変わる」(草原先生)のだろう。

 世界史Aが始まった頃、「歴史新聞をつくろう」という試みがよく行われていた。私も取り組んだことがあり、作成例として提示するため、『歴史新聞』という本も購入した。最近では小中学生の夏休みの宿題にも取り上げられているようで、「夏休みの宿題の定番、歴史新聞のアイデアと作成例」として、NAVER まとめにも出ている。小中学生時代に歴史新聞をつくった経験がある生徒には、ツイッターやLINEといったツールを用いたテスト問題は面白く感じるだろう。今年(2017年)のセンター試験日本史Aでは「妖怪ウォッチ」「ゲゲゲの鬼太郎」が使用され、2015年の神戸学院大の世界史の入試問題では、池田理代子氏のマンガ『女帝エカテリーナ』が使われた。アニメやマンガを使わなくても、試験問題を作ることは可能だが、ではなぜセンター試験や大学入試で使われるのか、もう一度考えてみたい。こうした試験問題に面白さを感じない教師の感覚は、生徒の感覚から遠ざかってしまっているように感じる。

 小田中直樹先生の著作に『世界史の教室から』(山川出版社)という本がある。大学生を対象に、高校時代に受けた世界史の授業についてアンケート調査を行い、さらに調査で名前が挙がった世界史教員にもインタビューを行うという、実におもしろい本だ(ツイッター上で世界史の授業について発言するなら、せめてこの本くらいは読んで欲しいのだが...)。同業者から批判されることよりも、現役高校生や元教え子、保護者をはじめとした「教員ではない人」から支持されることのうほうが、私にとってはずっと大切なことだ。私もこうした「話題になる問題」をつくってみたいものである。


社会科教育 2017年 11月号

社会科教育 2017年 11月号

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 明治図書出版
  • 発売日: 2017/10/12
  • メディア: 雑誌



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