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今年気になった問題~北海道大学 [大学受験]

 カリブ海地域には、主として( E )が商品作物として導入され、原生林が切り開かれてプランテーションに変わり、隣接する製造工場での新需要によっても森林の伐採が進んだ。それは(5)大土地所有制と奴隷制を促進した農作物であったといわれる。イギリスが支配したインドでも、19世紀前半のナポレオン戦争の時代には海軍の艦船建造のため、19世紀後半以降は(6)鉄道建設にともなう枕木の大量需要のため森林の乱伐が進み、ヨーロッパで行われてきた森林保護政策が導入されはじめた。
問6 下線部(5)について、(ア)17世紀前半からスペイン植民地で広がった大土地所有制の名称を答えなさい。また(イ)その農業経営の特徴を簡潔に説明しなさい。
問7 下線部(6)について、経済史的な観点から、帝国主義時代のイギリスによるインドでの鉄道建設の歴史的意義を論じなさい。


問6 アシエンダ制は山川の『世界史用語集』をみると2008年版で④、2015年版では③。地理の用語集では④である。世界史の東京書籍の教科書に詳しい記述がある。「スペインの植民地では、17世紀前半から、アシエンダ制とよばれる大土地所有にもとづく農園経営が広がり、大農園主は負債を負った農民(ペオン)を使って、農業や牧畜を営んだ。17世紀半ばから銀の生産が減少に向かって、交易がおとろえると、アシエンダ制はいっそう拡大した。」(H28年度用・東京書籍『世界史B』219㌻)

問7 河合の分析にあるように、題意を正確に読み取ることが難しい。
各予備校による解答例は以下の通り。
【駿台予備校の解答】
イギリス本国からの綿織物が送られた港と、市場や茶・綿花などの原料生産地とをつなぎ、本国への経済的従属が強化されるとともに、鉄道建設が本国の安定した利潤を生んだことから、中東・中国で鉄道利権の獲得競争が展開された。
【河合塾の解答】
インドは茶・コーヒー・綿花などの商品作物の供給地やイギリス産綿製品の市場となった。それらの商品作物や綿製品を大量かつ速やかに運ぶために鉄道が建設され、その結果、インドはイギリスを中心とする世界経済に組み込まれていった。
【代ゼミの解答】
内陸部で生産される綿花などの工業原料の運搬や、本国の投資家に経済的利益をもたらす投資を目的に建設され、インドはイギリスによって世界的な経済体制に組み込まれた。

 駿台については「インドでの鉄道建設の歴史的意義」に「中東・中国で鉄道利権の獲得競争が展開された」という事項が妥当かどうか。河合塾については、インドの商品作物として「コーヒー」をあげることが妥当かどうか。

 中谷臣先生の『世界史論述練習帳』に書かれているように、意義とはプラス評価であるのが原則。インドはイギリスによって世界経済に組み込まれていったという記述は、あまりプラスらしくないが、ではプラス評価として書ける内容があるかどうか。

 インドにおける鉄道については浜島書店の資料集『アカデミア』にダージリン・ヒマラヤ鉄道の写真と説明が掲載されていたが、吉岡昭彦『インドとイギリス』(岩波新書)には次のような記述がある。
イギリスは19世紀後半、インドに鉄道・通信網を整備し、20世紀初頭には鉄道キロ数が4万キロにも達した。軍事費・一般行政費など統治の費用はもとより、この鉄道敷設の費用なども結局はインドでの徴税収入によってまかなわれ、それによって得られる利益は逆にほとんどイギリス人のものとされた。インドの鉄道では、イギリスやヨーロッパ大陸に輸出される商品、たとえば小麦、油種、米などは飢饉のときの救済物資と同じように割引運賃が適用された。さちに重要なことは、内陸部から港への、逆に港から内陸部への貨物輸送料金は、内陸部相互間の料金よりも割安になっていた。このことがなにを意味するかはいうまでもない。それは、食糧や原料の輸出と外国製品の輸入とを促進し、逆に、インド国内における商品交換の拡大、国内市場の統一をさまたげ、さらにインド工業の発展をもおくらせることになる。貴重な原料や食糧は、高い世界市場価格にひかれながら、あたかも水が低きにつくがごとく、港湾都市へ流れてゆくことになり、インド国内にとどまろうとしない。第一次世界大戦後、ようやぐインドの工業化が問題になったとき、この鉄道運賃差別制度が批判の的になったが、事態はたいして改善されなかった。こうして、鉄道運賃政策もまた、インドをいつまでも後進的な農業国、食糧・原料輸出国、工業製品輸入国にとどめておく役割を果たした。

実際インドにおける鉄道の普及はめざましく、 1999年度のセンター試験世界史A(本試) 第4問Bには、次のような問題がある。

次の図は国別の鉄道営業キロ数を示したものである。国名a~cの組合せとして正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。(次の選択肢のインドは、英領インドのことである。)
train.jpg

① a―イギリス  b―インド   c―アメリカ
② a―イギリス  b―アメリカ  c―インド
③ a―アメリカ  b―イギリス  c―インド
④ a―アメリカ  b―インド   c―イギリス


 かつてインドの鉄道は線路の幅(ゲージ)が混在しており、、デカン高原で収穫された綿花を産地から海岸の積み出し港まで輸送するに際しては、綿花を貨車に積んでも、ゲージが変わるごとに貨車から貨車へと綿花を積み替えることが必要となったという(井上勇一『鉄道ゲージが変えた現代史』中公新書) 。
こうした事情を考えると、「帝国主義時代のイギリスによるインドでの鉄道建設の歴史的意義」として、インド側から見た意義は書きづらい。代ゼミの解答例がいちばん良さそうだが、問題の「歴史的意義」という表現があまりよくなかったような気がする。
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