So-net無料ブログ作成

「地域」と世界史 [その他]

 先日『学生が語る 戦争・ジェンダー・地域』について書いたところ、福岡大学の星乃治彦先生から『「地域」(七隈・福岡・東アジア)と生きる福岡大学』を送っていただきました。この冊子は、総合科学研究チーム「グローバル化の中の『地域』」というプロジェクト[http://www.cis.fukuoka-u.ac.jp/~hoshisemi/Project/global.html]が主催した講演およびシンポジウムの記録です。福岡大学といういわば「地域」の大学が地元とどう関わっていくかを考えていこうという研究ですが、中でも「リージョナリズムとナショナリズム」という問題提起は重要だと思います。

 2008年の10月に刊行された本『歴史学のフロンティア』(大阪大学出版会)のサブタイトルが「地域から問い直す国民国家史観」となっていることが示すとおり、地域という概念がクローズアップされるようになった背景には、国民国家という概念が相対化されるようになったことがあるのでしょう。

 「地域」という言葉に反応したのは、山川出版社が発行している『歴史と地理』の今年の2月号(No.631)に紹介されている「地域から考える世界史」というプロジェクトに私も関わっているからです。「地域からの世界史」(この場合の世界史は、地理歴史科の中の科目としての世界史)で使うときの地域とは、『歴史学のフロンティア』でいわれている「ローカル」な地域に近いと私は考えています。なお『歴史学のフロンティア』では、グローバル→リージョナル→ナショナル→ローカルというとらえ方を提唱していますが、私のイメージでは「地域から考える世界史」というときには「ローカル」よりももうワンランク小さなイメージを持っています。

 南塚信吾先生は『世界史なんていらない?』(岩波ブックレット)の中で、世界史を構想するヒントとして「ミクロ地域からの世界史」を提唱していますが、イメージとしてはこれがいちばんしっくりきますね。ですから、星乃先生から送っていただいた冊子にある「『地域』は人の生きていくもっとも大切な場所であり、だからこそ人を引きつける」とか、「地域とは人びとが基本的な生活を営み、かつさまざまな活動を展開する基盤となる空間」という言葉には、曖昧ではありますが共感を覚えます。

 私の子どもが通う小学校には、地域学習発表会という行事がありますが、この場合の地域は校区のことです。高校ではどうでしょうね?少なくとも郡市、県くらいの広さでしょうか。また、生活の基盤となる空間が複数の行政区分にまたがることもあるでしょう。確かに「地域は人間の意図する目的や見方によってその範囲や規模が規定される」(『「地域」と生きる福岡大学』)と言えます。

 『歴史と地理』に掲載された紹介文には、ある先生から出された「地域からの世界史は、それぞれの地域のお国自慢になるおそれはないか。それでは意味が無いのでは」という言葉が載っています。どのような文脈での発言で、またどのような議論が交わされたのかは不明ですが、私は「お国自慢、大いに結構」と思っています。小学生で自分の校区の歴史や特産品、先人の努力を調べて関心を持ち、成長するにつれて関心の対象範囲が拡大することになんら不都合があるとは思えません。授業で知ったことを契機に関心を広げていけばよいのであり、なにも授業がすべてで、そこで終わりということではないでしょう。エルトゥールル号のことを授業で扱うとき、熊本と和歌山で同じ扱いにできるわけがありません。

 『(「地域」と生きる福岡大学』で触れられている「グローバルに考え、ローカルに行動する」という言葉は、いい言葉だと思います。このような視点を意識することで、世界システム論ももっと授業に生かすことができるように思います。



 
nice!(0)  コメント(6)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 6

新二年

先生のブログ拝見させていただきました!!
今日の先生の話の面白さから先生から世界史をもっと学びたいと思いました!
 ほとんど世界史に関しては知識がないのですがこれからがんばっていこうと思います!
一年間よろしくお願いします!!(゚0゚)(。_。)ペコッ
by 新二年 (2010-04-12 22:25) 

zep

授業でも話したことですが、世界史という科目は基本的に「暗記地獄」なので、なかなか選択者は少ないのが実情です。3年生理系プラスS組の世界史選択者は合計18名という少数クラスになってしまいました。文系の世界史選択者は80人くらいいるんですがねぇ。>今日の先生の話の面白さ というコメントに負けないよう、これからもなるべく生徒諸君の興味が湧くような話をしたいと思います。
by zep (2010-04-12 23:50) 

COOL

初めてコメントさせていただきます。
岡山県の高校で世界史を教えている者です。
この記事が書かれてから随分時間が経っていますので,
このコメントも読んでいただけないかもしれませんが,
お読みいただけたら幸いです。

さて,遅まきながら,自分の関心もあって,
「地域から考える世界史プロジェクト」(『歴史と地理No.631』)に
興味を持ちました。自分の実践している世界史の授業の
参考にさせていただけないかな,と思っております。

ところが,Googleのグループサイトにどうやって
登録したらよいかわかりません。
お忙しいところ恐縮ですが,プロジェクトのグループサイトへの
登録方法を教えていただけませんでしょうか。
大変不躾なお願いで申し訳ないのですが,
返信をいただけたら幸いです。
念のため下記に私のメールアドレスを記入しておきます。
よろしくお願いいたします。

mailto:ho_gun@hotmail .com
by COOL (2010-08-24 10:24) 

zep

こんにちは。

まず、Googleのアカウントを取得してください。
もし、gmailのアカウントをお持ちでしたら、
そのまま使えます。

そして、以下のサイトにアクセスし、
http://groups.google.co.jp/group/tiiki-sekaishi/
「オーナーに問い合わせる」
から、参加希望の連絡を送ってもらうといいと思います。

もしうまくいかないときは、また連絡をください。
by zep (2010-08-25 22:53) 

坂本智恵子

この夏、LAで442部隊のドキュメントが上映されました。
今月、DVD化されましたので、授業のネタにでも・・・と、思いました。
by 坂本智恵子 (2010-12-01 10:47) 

zep

坂本さん、お久しぶりです。

その話、たしか私も耳にしました。

442部隊のGIジョーフィギュアを使って、授業で話したいと思ってます。
by zep (2010-12-11 09:37) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0